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2017シーズンからJリーグのサッカー中継は「スカパー!」から「DAZN(ダゾーン)」にバトンタッチしました。DAZNは10年間、2,100億円という巨額の契約金でJリーグの放映権を獲得したイギリスのPerformグループによるスポーツ配信サービスです。

DAZNによるJリーグの中継は通常は9台のカメラで行われていますが、日曜開催の試合は特に「サンデー・Jプライム」として16台のカメラによる贅沢な中継が行われているのをご存知でしょうか。2017年6月18日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ v.s. ジュビロ磐田戦が対象試合となり、メディア向けのツアーが実施されたので参加してきました。

JリーグとDAZN、サッカー中継へのこだわり

今回、メディア向けに解説を行ったのはDAZNコンテンツ制作本部長の水野重理氏と、Jリーグデジタルの武笠一樹氏です。ピッチ上で実際のカメラの位置を確認しながら、中継へのこだわりなども語られました。

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個人的な発見は、スカパー!時代は制作著作はスカパー!で、DAZNに変わった今はJリーグが制作著作をしているということです。Jリーグ中継の全戦をJリーグが映像制作しDAZNに提供。DAZNはそれを配信するという立ち位置になります。

DAZNはヨーロッパでの配信の実績があるので、その情報をフィードバックしながらより良いJリーグ中継を目指しているのを感じました。

カメラが通常の9台から16台になることで、スーパースロー撮影が可能なカメラを増やしたり、ゴールネットカメラやステディカムなどの特殊カメラが導入されたり、通常とは違う映像を届けることが可能になっています。

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赤いカメラが「サンデー・Jプライム」に追加されるカメラです。

「サンデー・Jプライム」は今シーズンからはじまったもので、まだ知名度はそこまで高くはないそうです。しかし、実際に映像を見た75%からは「豪華だ」という評価が得られているということです。

特に9台と16台で何が違ってくるかというと、リプレイです。1つのボールを16台のカメラで追っているので、アップであったり引きの絵であったり、または縦からであったりスーパースローであったりと、特に得点シーンでその豪華さに気づくことになります。なかなか出番のないカメラが何台かあるのも、ある意味では贅沢な話です。

J3のカメラは4台で、中央のカメラの映像がベースになり、シーンによって他の3台のカメラが活用されることになりますが、少し想像しただけでも、16台のカメラのリプレイがいかに豪華が想像できるのではないでしょうか。J3だとピッチレベルのカメラがありませんので、臨場感も大きく違います。

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リプレイに関してもこれまでは撮影した映像から1つか2つを選択してリプレイするような機材だったものが、現在は全てのカメラをリプレイできるようになっているということです。16カ所の映像をリプレイできるのですから、これは大きな差です。

今シーズンからの取り組みとして「サンデー・Jプライム」には「ニアライブ」という映像も公開されています。これはロッカーアウトのシーンを出しているもので、時間にして5秒くらいですが、ロッカーを出て行く選手たちの様子を記録したものです。

センシティブな時間帯でありスポンサーとの関係もあるが、普段は見られないものを見て欲しいとDAZNでは考え、Jリーグも同じ思いだったそう。セリエAやブンデスリーガも同様のコンテンツがあります。

生放送では問題がある可能性もあるため、撮影したものをすぐにチェックできる体制を整え、それをほぼリアルタイムに出せるようにしたことから「ニアライブ」と呼ばれています。Jリーグが制作しているという、クラブとの関係がより密接だからこそ撮れる映像で大きな付加価値となっています。

DAZNのサッカー配信を見ている人は気づいているかもしれませんが、世界に配信できるような標準化された映像を作ることも心がけているということです。それは例えば、同じ画角で試合開始前の監督の表情を伝えることや、バスでスタジアムに入る選手たちの映像を押さえていたりといったことです。これらを標準化することで、映像を購入する側も安心して購入できるようになるというメリットがあるとのことでした。

J1、J2全てで同じように撮影しており、こうした映像があることで、DAZNとしてもレビューショー、プレビューショーの映像素材として展開しやすくなるそうです。確かに、毎回フォーマットの違う映像では、それを編集して配信するのも大変です。標準化のメリットは大きいと思います。

ピッチレベルから見るカメラ

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埼玉スタジアムのピッチレベルから、実際にカメラがどこに設置されているか、どんな映像を撮影しているかといった解説も行われました。映像の標準化という話がありましたが、スタジアムで統一して同じ場所にカメラを置けるように考えているそうです。

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1カメはスタジアムの中心となるセンターラインにピッタリと設置されています。これはどのスタジアムでも同じです。

今まではあまり明確ではなかったけれど、新しいスタジアムに関してはカメラ位置を伝え、カメラ台を置かなくても良いように働きかけているとのことです。ケーブルを引かずに済むカメラ用の端子が設置されているスタジアムも増えているそうです(埼玉スタジアムもそう)。

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ピッチレベルでセンターラインにある3カメです。ヨーロッパでも使われており、大事なカメラだと考えているそうです。1カメが広い画を撮り、2カメが上からアップを撮り、3カメがあることでピッチ上の臨場感ある画が撮れるのだそうです。

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16カメは無人のカメラで、ゴールライン延長線上に設置されています。これでゴールを割ったかどうかが判別できます。

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ゴールネットカメラも無人です。ゴールキーパーの動きも捉えることができます。ゴールが決まると方向がズレることがあり、その場合はハーフタイムなどに直すそうです。

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8カメはバックスタンド側にあるカメラで、スーパースローによる撮影が可能です。通常より3倍多いフレーム数で撮影しているので、3倍ゆっくり再生することができます。こうして足場の台が組めるのも、場所を決める体制ができているという、Jリーグが制作するメリットです。

この斜めの位置のカメラは、Performがヨーロッパでスタンダードになっている位置として導入しているもので、決めにかかる時の足技やゴールした喜びを撮ることができます。

8カメが特別なのは、リプレイの時にしか映像が流れないことです。なぜかというと「イマジナリーラインを超えるから」という言葉で説明があったのですが、要するに通常はメインスタンドからの映像なのに、このカメラはバックスタンドからの映像になるため、視聴者が混乱してしまうからです。DAZNで配信を見ている人だけの映像です。

「サンデー・Jプライム」では逆サイドにも設置され、監督の表情がよく見えたり、対角線のフリーキックの撮影もできるカメラとなります。

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大型モニターのところには、ペナルティーエリア内のプレイがきっちり撮れる位置に、縦カメと呼ばれるカメラが設置されています。去年までは片側にしかなかったものが、今年からは両側にあります。これもセンターにくるようにしているのですが、例えば柏はクレーンを入れるなど、スタジアムによっては同じ画角の映像を撮影するための苦労があるとのことでした。

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7カメはハンディカメラで、ロッカールーム、バスから降りるシーン、試合が終わるとゴール裏に、試合後は監督インタビューなどに移動していくいちばん忙しいカメラです。選手入場を撮影した後、ここに移動してきます。

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「サンデー・Jプライム」のための10カメ、11カメはステディカムです。両サイドにあり、選手が駆け上がるシーンなどをいちばん近くで撮ることができます。

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もともと映画用機材で、手ブレしない撮影が可能です。ピッチサイドの迫力ある画が見られるのは「サンデー・Jプライム」ならでは、です。このように素晴らしい機材なのですが、外国人向けで重い、使用機会が少ないため使いこなせる人が少ない、といった難しさもあるとのことでした。

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特別に実況席も見学させて頂きましたが、ここはスタジアムの特等席です。ほぼセンターの位置で、全ての事象が分かります。テレビ映像は、DAZNで流れるものと同じものを見ているということです。

中継スタッフの数はカメラ9台の時で35〜40人、これが16台になるとプラス10〜15人となるそうです。

DAZNとJリーグのチャレンジ

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映像制作においては、Jリーグ・武笠氏の「チャレンジしていきたい」という言葉が印象的でした。

「スパイダーカムもJリーグで見られるようになる可能は?」という質問に対しても「コスト的なところもあるが、チャレンジしていきたい」という回答でした。映像技術は日々進化しており、Jリーグもいろいろ情報収集しながらできるかぎり新しいものにチャレンジしていきたいという意向です。

DAZNもJリーグと密接な協力関係を築きながら、世界の先端をいく見せ方をJリーグとしても追い越していき、世界の新しいスタンダードを築いていきたいとも考えているそうです。

ただし大事なのは、必要最小限の試合をおさえるベース、そして付加価値をつけるカラーの部分を分けて考え、地味な作業であるベースをきちんとするのはもちろんのこと、ファン・サポーターがみたいプラスアルファを考えていくと話されていました。そこに近づいていくことが、普段は見られないところに入ることができるテレビの醍醐味でもあります。

Goal Studiosによって毎節J1〜J3の1もしくは2試合をピックアップし、モバイル端末によって撮影しTwitter、Facebookに投稿するソーシャルメディア向けに制作されるコンテンツ「ピッチサイドライブ( #DAZNピッチサイド )」のように、SNSなどの周辺展開もすることで「あちこちでJリーグのことがバズっているよね」を作り、スタジアムに行こうじゃないか、DAZNで見ようじゃないか、という流れになるのが最終的にWIN-WINの関係を築けるのでは、という話もありました。

以下、豆知識のような情報です。

撮影した映像が全てアーカイブされているのではなく、試合終了後に製作会社が選ぶ良いシーンと、放送された映像がJリーグに残されているそうです。

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キックオフ前にスタジアムのサポーターがアップになることがしばしばありますが、ここはカメラマンの腕の見せ所で「使って欲しい」という画を撮ってくるそうです。家族連れや女性が多いのは、Jリーグとしてスタジアムの安心安全を伝えたい、という理由もあるのだとか。

制作著作がJリーグになったことで、全国どこでも同じ機械で同じ映像が出せるようになっています。データもJリーグ側で全て集計し、同じデザインで表示されるようになっています。

9台のカメラでも十分な映像が撮れますが、16台になることで、より贅沢なサッカー中継が可能になっているということが分かりました。試合は残念ながら2-4で敗戦してしまったので改めて試合を見たいとは思わないのですが、勝利した試合ならば、様々な角度からリプレイできるゴールシーンとか、きっと楽しかったでしょうね‥‥。

ということで、日曜の夜は大画面で「サンデー・Jプライム」をいかがでしょうか? 早く浦和レッズの勝利した試合を追っかけ再生したいものです‥‥。DAZNは月額1,750円です。サッカー以外のスポーツも見放題です。