浦和レッズ主催トークイベント「Talk on Together 2009」レポート「第一部 藤口社長&信藤TD」に続き「第二部 フィンケ監督」をお伝えします。

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1948 ブザー

1951 開始のブザー

大:モラスさんとフィンケさんです。ぼくもそうですが、みなさんも期待をもっていると思います。レッズのサッカーを攻撃的で面白いものにしてくれるときいている。今年、どのようなサッカーをしたいのか?

フ:コンバンハ。自分は今までコンビネーションサッカーを追求してきた。とても技術的に優れた選手、運動量が豊富な選手を使っていくことで、実践してきた。ここでもそれを実践したい。

もちろん全ての試合で望んでいることを実現はできない。大切なのは選手が同じ方向を向くこと。根本的なスタイルが変わることはないでしょう。練習を週末にも実践したい。それが私たちのコンビネーションサッカー。

大:具体的なコンビネーションサッカーのポイントは?

(モラス氏は通訳時に一切メモ取らず)

フ:もちろん豊富な運動量が求められる。来日した時に感じたのはそれが少ない。準備期間を早くはじめ、長く準備したいと考えた。豊富な運動量が全てのポジションで求められる。ボールを持つ技術も重要だがそれは心配していない。

準備期間のはじめのころに体力測定をしてデータを得られた。このデータをベースにいろいろな話し合いをして、それぞれの選手にあったメニューをつくり、選手が取り組んでくれた。この体力測定によってそれぞれの選手に適切な負荷を与えることができる。このような準備をしてのぞんだ。

大:走らなくてはいけない、技術的に高くなくてはならないというポイントをあげたが、実際にどういうサッカーになるのか?

フ:私のひとつの考えとして、ボールを奪った時点で準備して相手の陣地に向かうのが重要。うばってすぐロングボールをけると郵便局の速達と同じようなスピードでボールがかえってくる。チーム全体でボールをうばった。なぜ相手チームにプレゼントする必要があるのか。しっかりとパスを繋いでいくことによって、できあがった穴につけ込んでいくサッカーを展開したい。しっかりとショートパスをつなぎながら相手の陣地に迫ってスピードアップする。

一部の新聞でよく書かれている「新しい監督はロングボールを禁止した」もちろんそんなことはない。ロンクボールなしのサッカーはありえないでしょう。いいたいことはショートパスからしっかりとしたシチュエーションを作って効果的なロングボールを出すということです。それは効果的だと思う。そのようなシチュエーションを作っていこうと思っている。

大:パスをつなぐということはその分ミスも多くなるが?

フ:一つはどこか誤解があるようだ。必ずしもパスの回数でミスが増えるということではない。ただし、スタジアムの観客はしっかりパスを回せると思うようになる。10本目で失敗すると誤解を与える。統計上はミスパスが増えるということはない。一つはっきりいえることはポール保持率があがることです。60%以上なのにまだ得点できないかと批判的にみることはできる。しかし主体的に攻めているチームを褒めるべきではないか。

前もって話しておくが、私はドイツ人です。しかしいかにもドイツ人というタイプの指導者ではない。いかにもドイツ人的なサッカーを追求しているのではなく、フランス、スペイン、ポルトガルのサッカーに近いのではないか。みなさんがドイツ的なサッカーを見られると期待しているとしたら、座金かながらそれはかなわない夢となってしまう。

ですので、みなさん私がいちおうドイツ人ですが、がっかりしないでください。私がやろうとしているサッカーはロマンを提供してくれるようなサッカーを追求してきた。

1972年から1976年、この時はドイツサッカーは魅力的で美しかったが、その後、戦術的な穴に入ってしまった。2006年の後は非常に評価が高くなってきている。モダンな戦術が実践されるようになってきている。

大:会場に一人や二人は鹿島の回し者がいるかもしれないが、練習試合では4-4-2というシステムが多かったが、そういう風にいく予定ですか。鹿島の人が聞いても構わない程度で。

フ:実際に私たちは今までの練習試合通り4-4-2でやってきたし、鹿島についても情報を得ることができた。ブラジル的な4-4-2を実践しているいいチーム。開場にいる鹿島のスパイの方にお話ししておきますが、私たちも4-4-2でのぞむことになります。

しかしどうしてもいい結果を残すためには、相手に対するリスペクトが必要。私も鹿島をリスペクトしてそれなりに一生懸命に分析させてもらった。

大:40代まで学校の先生をしていたということだが。

フ:自分は喜んで高校の教師になったし喜びを感じていた。政治学、歴史学、スポーツ学を勉強して教えていた。当時のドイツは社会システム全体が変わろうとしていた。その時に大学で勉強していた。教師はほぼ決まっていて、それ以外は考えることができなかった。若い世代に何が変わろうとしているか伝えたかった。非常に高い確率で年俸のよくない選手にしかなれなかった。だとしたら、教師の方が喜びを感じることができるだろうと思った。

大:教師の経験で役立っていることは?

フ:実際に長い間、高校の教師として仕事していたことは非常に役立ったと思っている。なぜなら毎日のように若い生徒たちと接して、毎日がある意味では彼らにとって勝負であり、最終試験がうかるかとか、そういう意味では高校の生徒たちもプレッシャーと戦っていた。毎日、貴重な経験を若い生徒とできた。若い選手もさまざまなプレッシャーを受けている。6万人のスタジアムでプレイするのは彼らにとってもプレッシャー。教育的な意味でも学ぶことができて、若い選手と接するのに役立っているのではないかと思う。

大:オフィシャルハンドブックにも教師の話出てますので、そちらも買って下さい。

今年60歳になって最も心配されるのは初めて祖国を離れて日本の生活に慣れていないのではないか、戸惑っているのではないか。

フ:最初に話さないといけないのは、みなさんは必ずハンドブックを買って下さい。ここで話していないことがたくさん載っています。ハンドブックが売れても利益を得ることはありません。あくまでも友好的な関係を築くためにお話ししました。

ドイツと日本ではさまざまな文化の違いがあるが、それがなければここにいなかった。実際にクラブの監督してもう一度仕事をするのであれば、全く違う環境で仕事をしたいと思っていた。最初に話をうけたときに非常に興味深かったのは、全く違う環境でどういう経験をするのか、ということだった。実際に試合を見ていろいろ感じたし、サポーターも一生懸命に応援していたし、いろいろ感じ取ることができた。旅行して日本を知ることができた。このクラブで仕事をするならば面白いと思った。他の国の監督してW杯にいくという仕事もあった。もしこの魅力を感じなかったら、ここに座っていることはないでしょう。

大:日本の文化で特に新しく興味をもったことは?

フ:もちろん歴史を教えていたこともあるので、歴史と伝統と文化なは興味がある。しかし、みんなもいかにこの国が素晴らしいか、恵まれているかを選手に話している。みなさん、この食文化が素晴らしいか理解していますか。温泉が素晴らしいか。毎日の食文化の素晴らしさは世界を見渡してもトップレベル。バリエーション豊富でテーブルな並ぶのが当たり前というのはなかなかないこと。なぜ若い人がマクドナルドや国際的なジャンクフードを食べにいくのか理解できません。

大:日本食で好きなのは?

フ:実際にさまざまなものにトライした。特にスープと麺類、うどんやみそ汁が気に入っている。とうふが素晴らしい。これだけの質や種類があることを初めて知った。もし机におかれたらどうしても食べないといけないのが天ぷらです。天ぷらを断ることはできません。妻も日本での生活を楽しんでいるが、彼女も生活だけでなく食生活を満喫している。

特に素晴らしいと思っているのは朝ご飯。ヨーロッパで暖かいものを食べる習慣がない。でも日本ではあたたかい。ヨーロッパで最悪の朝食はイングランド。次はフランス。この二カ国の朝食は食べられたもんではないです。朝から暖かいものを食べるのは生理学的にいかにいいものであるか。

やっとマンションに入ることができた。私のマンションで最も活躍しているのは炊飯器です。

しかしやはり一つ批判的なことをいいたい。炊飯器は素晴らしいが、日本の家電の取扱説明書が日本語でしかない。国際的なメーカーでさえ、英語のマニュアルがない。どうかな。さまざまな家電についてもマスターするのに時間がかかってしまった。

ですので、このような事情があるので妻が1週間に3回、日本語の集中講座を受けています。彼女が日本語を勉強すればマニュアルを読めるようになります。

大:サポーターからいくつかの質問がきている。3つばかり。新しい戦術をやっているということだが、選手たちがどのくらい理解しているかどのように判断するか。

フ:とても大切なのは選手たちが新しいサッカースタイルに取り組んでくれたこと。まず選手たちは監督の様子をみる。しかし今回は全選手か新しいサッカーをやりたいということにみんなが取り組んでいる。日本・ドイツのコーチがいいチームになっている。選手もやる気に。現時点では、選手、コーチが同じ方向を向いているので、選手たちの良いパフォーマンスが見ることができるようになっている。

4-4-2は今日明日にでもできるようになるということではない。しっかりと練習していくことが大事。

大:サテライトの試合が少ないというのがJリーグの問題。この点はどのように考えているか。

フ:このクラブの契約書にサインする前に聞いたことがサテライトのこと。実践をつむことで選手は伸びることができる。しかし日本では少ない。はっきりとクラブにお願いしたのは、サテライトリーグに追加して20試合を手配するようにお願いした。これだけないと若手は伸びることができない。監督してサインする前に若手がいることが気づいた。しかし実践形式の経験をつんでいなかった。もったいない。はっきりとプラス20試合をお願いしたし、クラブも動いているはず。私も難しい人間なので、簡単にあきらめることはない。今後もクラブをつっつきたい。

31人のうち16人が23歳以下。そのうち、3、4、5人は定期的にトップの試合にでることになるでしょう。それ以外にも優れた若手がいるが、それをのばすには定期的に試合に出場することが重要。この選手たちの試合を手配することが重要。この質問をしてくれたサポーターはクラブの現状を理解している素晴らしい方だ。

大:レッズのサポーターはサテライトの試合にいくのでも有名。今年はいかなくてはいけない試合がプラス20試合。みなさん、手帳に書いておいてください。

Jリーグは過密日程になることが多いが、そういうときにローテーションするつもりはあるか。

フ:私はローテーションという言葉は好んでいない。ローテーションという言葉を使ってしまうと、順番を待ってしまって勘違いがおきることになる。大切なのは毎日の練習でどんなプレイを見せているか。年間を通して素晴らしいプレイを見せるのは難しい。コンディションが落ちたときに、いかに主力であってもベンチに座ることは十分にありうる。選手のコンディションを考えての判断だと思っています。

記者会見でも話したが、ピッチにたつ11人がもっとも優れた11人ではない。いかに、チームとして機能できるかどうか、この11人がピッチにたつことになる。

プロサッカーはどんどんメディアの注目を集めるようになって、世界的にも大きく報道されるようになった。そうなるとチームではなく、限った特定の選手がメディアに出ることになる。これはよくない傾向だと思う。残念ながらこのような数人の選手が特別扱いされることで彼らが勘違いすることもある。サッカーがチームの競技であることを忘れてはならない。もちろん個性をもった選手はのばさなくてはならい。それも必要だが、個性が全てではない。実力と特徴をチームのためにいかさなくてはならない。

実際に一部の報道関係者は必ず数人と特定の関係を築こうとする。そしてその数人を何度もメディアに出してキャンペーンをはろうとする。これは選手に取っても負担になる。監督しては数人が特別扱いされるのはやりにくいが、選手にとっても良いことではない。数人の選手が数人のメディア関係者と結びついて、監督に対してのアンチキャンペーンをしてシーズンすぐに監督にくびになることがよくありました。このような現実は受け入れなくてはならないが、忘れてはいけないのはサッカーはチーム競技であるということ。

それでサポーターが間違った情報を得るのは残念なことだしできる限りそういうことがおこらないようにしたい。

数ヶ月間、もしくは数年間、メディアにスタートして煽られていた選手がベンチに座ることになるかもしれない。逆に残念ながらそれがネタとして報道されるかもしれない。しかし大切なのは、私たちがチームだということです。実際に私たちが大きな交差点にきたとする。15人の選手がいる。全員が手を挙げて「私は素晴らしい」というかもしれない。しかし、何人かが右にいったり左に行ったり、別の方向にいったら結果はでない。大切なのは監督と選手が同じ方向を向いて進むこと。これがいつも選手たちに話していることです。共同作業をして目標にしっかりと進んでいく。これが大事なこと。

大:メディアの末端にいるものとして針にむしろに座っているよう。今年の浦和レッズには非常に大きな期待をしている。明日発売のサッカーマガジンの順位予想では、鹿島ではなく浦和の優勝を予想した。それは予想なので当たったことが無いのですが。

一番大事なのは、浦和レッズというチームがフィンケ監督のもと、選手もクラブも一つの新しい方向に向かいはじめたということではないかと。もしかすると結果がでない苦しい時期があるかもしれない。記者として、自分に最初はがまんだぞ、と言い聞かせることにしている。必ずレッズがくると信じて、トトを買い続けたいと思う。

「我慢」を今年のキーワードにしたいが、いかが?

フ:もちろん我慢も大切だが、現場の人間にしてみれば我慢できないというのも大切。できるかぎり早く成功したいという強い気持ちをもって毎日の仕事にのぞむことが大切。最終目的地に辿り着くには時間がかかるかもしれない。心の中では我慢できないキャラクターも大切なのでは。

大:補強なしでやっていく。どういう決意でしょうか?

フ:どのような選手を買うべきか、買いたかったか、獲得に動いたのか。そういうことを公の場で話すことは一切ありません。しかし自分にとってみればこの数週間でこのクラブにどんな選手がいるかを見極めるのが重要だった。選手を見ずに補強したくなかった。このクラブの選手の実力を伸ばしていくのが、魅力的な仕事の部分だと思っている。近い将来には新しい選手を買うということがでてくるかもしれない。しかしそのことはクラブの関係者と話して、どのくらい予算があるのか、どのくらいの選手を引っ張れるのか話し合いをした上で、決まってからみなさんに話したいと思います。あの選手を買わないとダメだ、という条件は出したことはない。

大:ヨーロッパでは新しいイーズンをアドベンチャーと呼ぶ。フィンケ監督と浦和レッズのアドベンチャーはどのようになりますか?

フ:いつも新しいシーズンは冒険ではなく旅。日本にくるともそうだった。2008年にレッズは新しい旅をしようとした。夢をもって旅に出た。しかし残念ながらいい形で終わらなかった。なので今シーズンはしっかりした準備をして旅に望みたい。今回の旅に関しては、私たちには若手選手がたくさんいる。私も積極的に若手選手に試合に出るチャンスは与えたい。定期的に出られるかは彼らのパフォーマンスによる。経験がないと試合中にミスもすることがある。もう使わないとしたら選手の成長はない。ある一定のミスは許さなくてはならない。若い選手の刺激がチームにとっていい方向になるように。

繰り返すが大切なのは毎日のパフォーマンス。これができれば、長い旅の中で多くの選手が喜びを得ることができる。

若い選手よりも年上の選手がよいパフォーマンスをしていれば彼らが出るのは当たり前のこと。大切なのは練習でのパフォーマンス。しかしはっきりいえるのは、優れた若手がいる。そうした若手と仕事をすることに喜びを感じている。彼らにもチャンスを与えるべきだと思っている。彼らがもっている能力を伸ばさないのは残念なこと。もちろんシーズンは長いのでさまざまなことを受け入れるが、しかしできるかぎり若手にチャンスを与えることでチームを活性化して良い結果が得られれば。

チームの平均年齢を落とす作業を1シーズンでできると思わないで下さい。今後も30代の優れた選手をとってくるのか。日本で23歳の優れた選手がいるのか。1シーズンで平均年齢をガッと落とすことはできません。数年に渡るプロセスである。質のある選手を引っ張ってくるこができればチームのレベルが上がる。

大:浦和レッズの旅が良い旅になることを祈っています。