2016 02 01 1607

「ネクマストゴール!」は、2002 FIFAワールドカップ・オセアニア予選において、オーストラリアに31-0という歴史的大敗を喫した、アメリカン・サモアのサッカー代表の再挑戦を描いたドキュメンタリー映画です。サッカー少年のCHONANと何気なく「Hulu」で見始めたのですが、全てのサッカー少年が見るといいと思ったサッカー映画です。代表や欧州リーグだけでなく、こういう世界、生き方もあるのだということを。ネタバレありの感想です。

2001年、FIFAワールドカップ予選にて0対31でオーストラリア代表に大敗、公式戦30戦では200ゴール以上の失点、全敗、10年以上にわたりFIFAランキング最下位、まさに"世界最弱"、それがアメリカ領サモア代表チームである。最弱と呼ばれた選手たちは、大敗で心に傷を負ったゴールキーパー、女性の心を持ったディフェンダー、家庭のために軍人になる道を選んだフォワードなど、アマチュアの寄せ集め集団。そんな彼らのもとに、米国サッカー連盟より命を受けたオランダ人監督がやって来る...。

そもそも、アメリカン・サモアとはどこなのか。サモアとは違うのか。そんなことを疑問に思い検索しながら映画を見ました。アメリカン・サモア、つまりアメリカ領サモアとサモアは別の国で、日付変更線を挟んで位置しています。

産業がないために、アメリカン・サモアの少年たちはハイスクールを卒業すると、軍隊に入隊して島の外に旅立ってしまいます。必然的に、島に残った男たちで代表チームが作られるのですが、もちろん全員アマチュアです。上手な選手を国に残したくとも、環境がそれを許しません。

にっちもさっちも行かないアメリカン・サモアのサッカー協会は、アメリカに助けを求めます。監督求む。それに応じてやってきたのが、MLSなどで監督経験のあるオランダ人のトーマス・ロンゲンです。彼は、自分流でアメリカン・サモアのサッカー協会や選手たちに要求をつきつけます。「強くなりたくないのか」と。

サッカー強豪国であれば、サッカーのために生きる。これは非常に当たり前の対応を求めているだけであって、しかし明らかに流れる時間の違う中を生きる選手、協会の人たちと、トーマス・ロンゲン監督の間には、不協和音も聞こえてきそうになります。

しかし、お互いに距離を縮める努力がありました。やがて、島にゆっくりと流れる時間、慈しみの心に癒やされるロンゲン監督。彼自身、18歳の娘を亡くしたことがあり、心に傷を負っていたのです。

ワールドカップに望む選手たちに、彼は穏やかに言います。「我々は娘を亡くしている。我が子を葬るのはつらい。あえて言おう、人生にはそう何度もチャンスはない。今を生きろ。困難をチャンスと思え。障害ではなくチャンスと考えるんだ。もっと悪いことも起こるんだから」と。

そして、アメリカン・サモアのサッカー代表チームは、2014 FIFAワールドカップの予選に臨みます。そう、ワールドカップです。サッカー少年が誰もが恋い焦がれる、あの舞台に。弱い? そんなことは関係ありません。国の誇りをかけて立つ舞台なのですから。ましてや、あの大敗の記憶を払拭しなくてはならないのですから。

チームには軍隊に入りアメリカに渡っていた選手や、かつてプロリーグでプレイし、祖父にアメリカン・サモアのルーツを持つ選手が合流します。「ワールドカップ予選の舞台に立ちたかった」と。

もちろん、強いチーム、大勢の人が見守る舞台で戦うことも大事なことだと思いますが、一方で、こうした境遇のチームがあり、しかし国の誇りをかけて戦う若者たちがいるということを知るのは、ぼくにとっても息子にとっても大事なことだったと感じます。いつ、どこでもサッカーはできる。勝利とは違う、新たなサッカーな魅力を知った気分です。

そして、この物語はわずか1ヶ月弱のことでした。プロフェッショナルな監督が指導することで、見違えるように変わっていく選手たち。スライディングの仕方さえ、満足に知らなかったのです。チームが解散するときに、選手たちが行ったハカ。短い青春のような映画でした。

また、アメリカン・サモアには第三の性を持つ世界初のサッカー代表選手ジャイヤ・サエルアも所属していました。当初はベンチを温めるだけの存在だと思われていたのですが、先発起用され、気迫あふれるプレイを披露したのです。

小さな国の、小さなチームで紡がれる物語。FIFAランキング最下位だったアメリカン・サモアは、果たしてワールドカップ予選で勝利をあげることはできたのでしょうか!?

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