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Adobeには「Kickbox」という、新規プロジェクトを生み出し成長させるための仕組みがあるのだそうです。どうやってAdobeがイノベーションしているのか? その秘密について、仕掛け人であるMark Randallに話を伺いました。テクノロジー企業ではGoogleの20%ルールのような新規プロジェクトに対する“投資”は有名な話ですが、Adobeにもこのようなシステムがあったのですね。

Mark Randallによる「Kickbox」の説明

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どうやってAdobeがイノベーションしているか、という話をする。Adobeのプロセス「Kickbox」は、3年前に始まった。「Kickbox」は私が作ったもの。Adobeでイノベーションを発達させるためのもので、全社員が対象。2015年2月に、オープンソース化して話題になった。「Kickbox」は、全て無料でダウンロードして使うことができる。いくつか翻訳もされている。

「Kickbox」はどうしてはじまったか? 箱に入っているから「Kickbox」。中にはイノベーターが必要とするものが入っている。

私たちは、Adobe社員に「失敗してもいい」という環境を作りたかった。「Adobeは失敗を許してくれないのでは?」と言われていたので。たくさんの失敗をしないと、成功できない。私自身がスタートアップ出身の人間で、最後の会社を売却してAdobeの社員になった。つまり、Adobeとスタートアップのいいところを合わせたものが箱に入っている。

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失敗を増やしたい。全て成功するのは良いことといえば良いことだけど、革新的でないから成功している、という側面もある。本当に革新的なことをしているなら失敗する。失敗しながら良くなっていく。「Kickbox」は失敗率を上げるのが目的。といっても、滅茶苦茶すればいい訳ではない。上手な失敗の仕方を伝える必要がある。その体験を同僚たちに伝えたかった。

Adobeの同僚は頭がいい。私がスタートアップしたのは誰も雇ってくれなかったから。私がやってきたことをAdobeの人はやっていない。私は失敗がうまい。これをAdobeにも伝えたかった。私たちは世界を変えていきたい。失敗をしながら学ぶ。

「Kickbox」は社員全員が対象。カフェテリアではたらいている人もお掃除の人も使える。隠れた才能を探して生かすのが「Kickbox」で、誰でも成功できるのが「Kickbox」である。

「Kickbox」を利用するには、Adobeで2日間のワークショップを受けて貰う。今まで1,300人に教えてきた。

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「Kickbox」の中に何が入っているか? 砂糖、コーヒー。なぜか? 砂糖とカフェインは重要な食品の要素。お金もあげる。これはイノベーション、リサーチのための資金。1,000ドルがプリペイトのクレジットカードに入っている。

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一人ひとりに何があるか分からない。「Kickbox」はアイデアに投資するもの。これが効果がある。なぜか? 「Kickbox」で発掘された15〜25くらいのアイデアから、5つか6つのプロダクトになる。失敗が少ないと確信した。

「Kickbox」のゴールは「1,000のアイデアにお金をだそう」というところからスタートした。1,000のアイデアをカスタマーの目に触れさせる。結果的に、20より1,000やった方がお金がかからなかった。

分散してイノベーターに自分のアイデアを自分でやらせた。「Kickbox」のゴールは1,000のアイデアから1つの宝を見つけること。1つでいい。1,000ドルを使うのに上司の承認はいらない。

最初に「Kickbox」をAdobeに提案したら、財務から猛反対をうけた。私は言った。「無駄にしてしまう人も出てくるかもしれない。だからなんだっていうのでしょう」せいぜい1000ドル。「無駄にしたり盗んだりする人がいたらどうなる?」と言われた。「Adobeの人が信じられないのか?」と言った。彼らを信頼し、やることを見てみようということになった。今まで1,000ドルをくすねた人はいなかった。

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「Kickbox」には「Start Here」という冊子が入っている。中はチェックリストになっている。

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レッドボックスの次に配られるのは、ブルーボックス。ブルーボックスはこれまで25個を配布した25個目は先週、渡した。

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「Kickbox」は、もともと小さい賭けをするというプロセス。どんな製品になるとしても、元は1,000ドルでいい。

イノベーションのお金はカスタマーが求めているものは使わない。間違ったものを作ってしまうのがリスク。小さい市場に出していく、それこそがリスク。カスタマーがいるか、それを検証するための1,000ドル。

いらいものを作るのは、非常にお金がかかることになる。リソースを無駄遣いしたくない。お客が痛みを抱えているところに使いたい。

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レベル1 Begin with motivations

私はお金のために発明したことはない。人が恋に落ちるのにお金を払うことはない。だから「あなたの仕事はイノベーションですよ」といえば仕事をしているふりをするでしょう。問題を解決したい、やりたいからやっている。なぜやっているか、自分自身の理由があれば良い、それが重要。「会社はこれをやってほしいかな?」と考えていたら失敗する。

Adobeの初期からいた、メンターのような人がいた。「(こんなことをしていたら)首になっちゃうんだけど」といったら「だけどAdobeがやって欲しいことやってるんじゃない、自分がやりたいことをやってるんじゃないの、自分がやりたいことをやるから面白いことができるんじゃないの」と言われた。

「カスタマーのニーズとやりたいことを見つければ世界は変わる。そうじゃないと何をやっても無理だ」とメンターはいった。「そうすると、お客に素晴らしいことができる」

なぜやりたいのか? お金持ちになりたい、上司を盛り立てたい、なんでもいい。イノベーター自身が信じること、大事に思うことをやる。レベル1はプライベートなことだから、誰かに見せなくていい。しかしパワフルなモチベーションでなくてはダメ。

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レベル2 Ideate(アイデア化する)

どうやって良いアイデアを使うのか? 「Kickbox」やってくる人の半分は、アイデアをもっている。避難訓練のようなもの。火事の前にやって欲しい。アイデアがある人がきて欲しい。

どうやってアイデア化するか教える。実験のようなもの。エクササイズのようなもの。何度でもやる。2つか3つアイデアをみつけるには、2,000、3,000のだめなアイデアがあってこそ。決してかっこいいことではない。が、それこそが重要になる。トライして、美しく失敗することが重要。

またやっちゃったと思えばいいが、こういうのはAdobeのような大きな会社では珍しいやり方。失敗について語るわけだから。例えば自転車に乗るのもそう。転んでもまた乗る。だんだんと転ばないようになる。

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成功するのに5つ重要なこと。

観察する
質問をする(なんであればこうなの?なぜこのやり方なの?)
関係を取る
関係性をみる(つなげる力を持っている人は大きな力)
実験

「Kickbox」に関する質疑応答

Q. 「Kickbox」のアイデアの中で、既にマーケットでローンチしている作品はある?

A. 「smartpaper」。彼女は「Kickbox」では受け入れられなかったが、プロダクトマネージャーになった。

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「spitball」。立ち上げたが失敗した。その後、クリエイティブクラウドのシニアプロダクトマネージャーとして抜擢された。

Adobeでは、失敗が大変なことだと捉えられていた。社風を変えたい。失敗率をあげたい。ゴールはイノベーターを作ること。イノベーションを作りたいといってもどこからくるか分からない。イノベーターが大事。優雅に失敗する。1,000ドルかけて失敗に投資する、そういう環境を醸成する。

社員を信頼し適切なプロセスを与えること。空間を与えて干渉しない。社員は1,000ドルを使って自分のアイデアを探求する。

Q. 3年間でどのようにかわってきた?

A. 最初のワークショップが3年前の10月。少しは変わってきたところがある、いろいろとフィードバックがあって。でも3年前の10月以来ほとんど変わっていない。

「Kickbox」はそんなに大きなものではない。私の8割の仕事は新しいことをすること。2割が「Kickbox」。会社のイノベーターが他のイノベーターを助けるのが目的。

他の会社がどうみているか、というのもあるが、従来型のイノベーターのプログラムではない。どうイノベーションするかを教えるものではない。

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